No.002 「第2話:怒るではなく叱るということ」
今回は、私が高校2年生のころのお話しです……。あれは、アルバイトを始めようやく1年が経過し、ちょうど仕事にもなれてきたころのことです。当時の私を振り返ると、所属していた部署の中では、スタッフ暦も長い「お山の大将」的な存在になっていたころでした。
その時の責任者は、私の師匠で楽しいが怖い町丸さんと、とてもやさしい女性の宮外さんです。現場では、夏のピークに向けておよそ1ヶ月前から新規スタッフが採用されます。
採用されたスタッフは、どこの部署であろうとも全員参加の導入研修を受け、現場トレーニングとなるわけです。
現場トレーニングは3日間、責任者が付添いマンツーマンで行われます。特に人数が多い場合は、私のようにスタッフ暦の長いスタッフが新人スタッフをフォローしていきます。
私のところにも新人スタッフがつき、半ば自慢げに仕事を教えていたと思います。(先輩面して偉そうに……)そんなこともあって、お調子者の私は新人を子分のように引き連れ大満足。その日はとてもいい気分でした。
現場から帰ってくると全員での後片付けの最後に、責任者と私たちによる終礼が必ず行われます。そこでは、本日の反省や連絡事項、たまにお褒めの言葉などなど……。
特に新人スタッフが入ってくるこの時期の終礼は、必ず最後に新人スタッフ恒例の自己紹介があります。
その日私が子分のようにしていた新人スタッフを含め10人が前に出て自分の名前や学校、そして好きな花火(ちょうど終礼の時間がパークの花火の時間と重なるため、面白がって好きな花火を聞くのです。)などを、一人ずつ行います。
私たちベテランスタッフ(この日まで)は列の一番後ろに陣取り聞いていました。
最初の何人かは興味があって話を聞いていたのですが、だんだんと私も飽きてきます。私は隣のスタッフにちょっかいを出したり、自己紹介にちゃちゃを入れて楽しんでいました。だって、そこには厳しい責任者の町丸さんがいませんでしたから……。
とっいきなり後ろから思いっきり回し蹴りが飛んできたのです。私はそのまま地面に転がり、振り向くとその日もう一人の責任者町丸さんが鬼の形相で立っています。いつもなら「痛てぇーなこの野郎!!」と威勢良く突っかかるはずの私が、何もできずにただただむなぐらをつかまれ呆然。
なぜ何もできなかったのか?
今考えると、町丸さんはマジだったからです。
「てめぇー、自分は偉いから新人がしゃべってても聞かねーでいいのか」
「初めて大勢の前で話す人間の気持ち考えろ!!」
町丸さんの目は真剣です。そこまでマジになっている人と向かい合ったのははじめてです。
そのときの私の心境は「このままではやばい。新人スタッフも見ているし、周りのみんなも見ている。このまま反撃しなかったら、今までのようにお山の大将で居られなくなる。早く反撃しないと……」
しかし身体は一向に動きません。
今考えれば、きっとそんな私の間違ったベテラン意識を正そうとしていたのかもしれません。そしてそのまま終礼が終わり、町丸さんから「新人スタッフの気持ちも考えられないようなやつはもうこなくていい。さっさと帰れ」
いつもなら、「ふざけんじゃねぇよ。ハゲ!!」とか何とか負け惜しみを言いならが帰るところでしたが、その日は何も言えずにただただ、下を向いて一人でとぼとぼ帰ったのです。あの事件の帰り道は今でも覚えています。
翌日出勤しポジション表を見ると、私の名前の横に「お前は一生プラグだ」と町丸さんのハンコ付きで書かれていました。
プラグポジションというのは、絶対に決められたポジションから動けないポジションのことで、当時私が行っていたポジションは、キャプテンというポジションで、指定された範囲を巡回しながらまとめていく仕事でしたから、きっと町丸さんは、新人スタッフの気持ちを考えろと言う意味と、私がじっとひとつのところにいることができないのを知っていたのでしょう。
その日から2ヶ月間、ほんとに毎日同じポジションでした。(つらかったな〜)
今この事件をことを振り返って見ると、それまで怒られることは何度となくありましたが、徹底的に「叱られる」という経験をしたのが初めてだったと思います。
怒られるのにはなれています。だって、相手の感情が治まるまで黙って下向いていればいいわけです。でも、「叱る」というのはちょっと違うと思うのです。たぶん相手と同じ目線で、本気で相手を正していく、そして相手が答えを出すまで終わらないそういうことだと思います。
私にとって、あの事件で叱られることがなければ、ずっと「お山の大将」で本当の意味でのベテランスタッフになれなかったでしょう。自分で言うのもなんですが、あの時、本気で叱られたから、本当の意味でのベテランスタッフになれたのだと思います。
余談ですが、このことは責任者のノートにしっかり記され、それを読むと私をプラグポジションにすることを続け、その付近のポジションに必ず新人スタッフを配置し本当の意味でのベテランになるまでポジションは変えないようにと書かれていました。
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2005年06月15日 00:02 |メールマガジン(バックナンバー) |コメント(0)