No.008「第7話:教えないこともトレーニング」



今回は、私が高校を無事!?卒業した12年前の春、高校を卒業し晴れて、念願のア
トラクションのスタッフになるための、最初のスタッフトレーニングを受けた時のお話
しです。

今振り返ってみると、当時の私は入社から約3年が経ち、所属していたパレードゲ
ストコントロールでは、知らない人も、知らない事もないボス的な存在でしたから、
「知識」と「変なプライド」の両方を持ち合わせていた時期だったと思います。

私が配属されることになったアトラクションは、「お城の中を探検する」アトラクション
です。ご存知の方も多いと思いますが、約20分間、お城の騎士(スタッフ)と一緒
に城内を歩いて冒険するアトラクションです。

なんとそこには、パレードゲストコントロールの責任者でもあった、あの怖い町丸さ
んがアトラクション責任者で、他にも生重さんがトレーナーとしている場所でした。

さらに嬉しいことに(T_T)私のトレーニングを担当するのは、生重さんに決定してい
ました……。(運が良いのか、悪いのか……)

お城の中を約20分間かけてガイドするわけですから、ナレーションだけでもたくさ
ん覚えなくてはなりません。しかし、そこは悪知恵の働く私です。

「トレーニングは5日間。まさか初日からガイドをやるなんてこともないし、せいぜ
い4日目ぐらいまでに覚えれば大丈夫だろう」なんて考えいました。

それどころか、自信過剰の私は、パレードゲストコントロールの仲間や後輩に「やっ
ぱり俺はすごんだぞ」と言わんばかりにこう話します。

「香取さん、3月からはお城のアトラクションに行くんですよね」
「おぉそうだよ!!」(自慢げ)
「すごいですよね。あれだけたくさんのナレーション覚えるのって、難しいんじゃな
いですか?」
「フッ、あんなのチョロイもんだよ。まぁ、俺にしてみれば楽勝だからさ!!」
「おぉ!! さすが香取さんですね」

こうして周りから言われれば言われるほど、どんどん調子に乗っていく私……。
そしてとうとうトレーニングの当日まで、せっかく3週間前に渡されていたはずのナ
レーションブックを覚えようともしませんでした。

〜そしてトレーニングの初日〜

トレーニングは、私のほかに同じパレードゲストコントロールだった、新沢さんと2
人です。コスチュームに着替えて、オフィスに行くとトレーナの生重さんが待ってい
ました。

「おはよう!! どう、ナレーション覚えてきた?」
「いぇ、まだ全部覚え切れていません。ごめんなさい」(新沢さん)
「うん、大丈夫だよ。これから覚えれば」
「香取さんは覚えた? まぁ香取さんは楽勝だよね」
「はっはぁ……」
「じゃぁ早速、現場に行きましょう!!」

こうしてトレーニングの初日が始まりました。
生重さんにくっついて、早番の業務を教わりながらお城の中を案内されます。

まだオープン前のお城の中で、それぞれのシーンでガイドがどこに立てば良いか、そ
こで使用するスイッチの使い方は、など一通り教わります。そしてオープン後に実際
のツアーにゲストの最後尾から参加して体験をします。

その後昼食までは、裏の事務所でこのパークのテーマや、フィロソフィーなどを教わ
ります。もう午前中だけで目まいがしそうなほど、覚えることがたくさんです。アト
ラクションもパレードゲストコントロールも大差はないだろうとなめていた私は、頭
がパンク寸前でした。

そして昼食前にこのアトラクションの責任者の町丸さんの所へ行きました。

「おぉ来たね。このアトラクションの責任者の町丸です。よろしくね!!」
「よろしくお願いします」
「じゃぁ香取さんは、もうそのまま次のガイドでデビューしてもらいましょうか」
「えぇっ!!いや、まだ もうちょっと、あの、えーと……」
「なんだ、自信ないの。ナレーションブックも3週間前に渡したし、今朝立ち位置も
 教わったでしょ!!」
「はっはい……。あっ でも まだなんて言うか、今日は初日だし……」
「わかったよ、後はトレーナーの生重さんにまかせます」
「了解しました」(生重さん)

内心ナレーションをぜんぜん覚えていない私は焦りました。まさか初日にガイドデビ
ューはしてないだろうって、思っていたことを見透かされたようでした。

「香取さん、どうする?今日デビューしとく?」
「いや、って言うか、まだもうちょっと……。新沢さんの方が良いんじゃないですか
 ね」
「バーカ!!新沢さんはまだナレーション完璧じゃないって、今朝言ってたでしょ。ね
 ぇ」
「ハイ!!」(新沢さん)
「あっ僕もまだナレーション完璧じゃないんで……エヘヘッ」
「なんだまだ覚えてなかったの、じゃぁ明日にしましょう」
「あっ、あした!?」
「うん、まだ完璧じゃない部分は覚えてきてね」

こうして、私はトレーニングの2日目にデビューすることが決まってしまいました。
初日のトレーニングが終わり、一目散に家に帰った私は昨日までとはうって変わって
、ほとんど徹夜で、ナレーションの練習を行います。

しかし、所詮は一夜漬け。あんなにたくさんのナレーションを一晩で覚えられるはず
がありません。

〜そしてトレーニング2日目〜

午前中は何とか待ってもらい、午後にデビューが決定。
さらにこの日は土曜日、アトラクションにはゲストの長蛇の列・列・列……。

トレーナーの生重さん、デビュー前の私に、容赦なく大きなプレッシャーをかけてき
ます。

「昨日待ち時間の測り方を勉強したよね。今何分待ちかわかるかな?」
「ハイ、えっと列の曲がってるところまでですから、45分です」
「おぉ!! 正解。新沢さん良く覚えていたね」
「ありがたいね。こんなにたくさんのゲストが長い時間待って、私たちのガイドを楽
 しみにしてるんだよね」

今の私には待ち時間を計算することなどできないぐらいに緊張し、今にも心臓が口か
ら飛び出てきそうです。

「香取さん、どうしたの?」
「いぇ何でもないです」
「ほら、ちゃんと見て!!こんなにたくさんのゲストがこれから私たちのガイドに期待
して45分も待ってくれてるんですよ」
「きっと遠くから来てくれている人も多いでしょね……」

もう、いいからこれ以上話し掛けないでくれ……(>_<)
そしていよいよ、私がガイドする時がきてしまいました。心の中では、あの時もっと
練習しておけばよかった。と思ってどうしようもありません。

「よし、次のグループでデビューしましょう」
「えっ、もうちょっと待ってくれませんか……」
「ダメです。これ以上は待てません。さぁ行くよ!!」

〜そしてデビュー〜

「みっみなさん、こんいにちは!!
(中略)
 早速、お城の中へ入って見ましょう!! さぁこちらへ」

最初の部屋はどうにかクリアしたものの、次の部屋で「魔法の鏡」がしゃべりだした
とたん、それまで覚えていたナレーションは、真っ白に……。思い出そうとすればす
るほど、言葉が出てきません。そうこう、しているうちに、鏡だけがしゃべり続けま
す。

ここからは、ナレーションどころの話ではありません。私は必死に思いつく限りの言
葉を話すのですが、ぜんぜんツアーになっていません。私が、言葉に詰まって後ろに
いる生重さんに助けを求めても、途中でガイドを変わることなんてできません。

時折、ゲストからも「お兄さんがんばって」の言葉まで出てきます。心の中で、本当
に申し訳ないなと思いながらも、何とか人生の中で一番長かった20分間が過ぎ、出
口のところに立ち、ツアーに参加してくれた全員にお詫びをしていると、お客様全員
が「ありがとう!!がんばってね!!」と声を掛けてくれました。

今まで練習をしていなかった自分と、45分間も待ったのにこんなにやさしく声を掛
けてくれるゲストに、どうすることもできずに、ただただ頭を下げ、涙を流すばかり
でした。

最後のゲストを見送り、一番後ろから付いて着てくれた生重さんと一緒に裏の事務所
に戻ります。涙を流し下を向いている私に生重さんが手をさしだします。

「香取、デビューおめでとう!!」

生重さんのやさしい言葉に、手を握り返しながら

「すみませんでした。俺……」
「大丈夫。これでわかったよね。次に何をしないといけないか」
「ハッハイ。練習してきます」
「よし、良くがんばった」

こうして、デビューで撃沈された私は、真剣に練習し今まで以上に一生懸命トレーニ
ングを受けるようになりました。

そしてトレーニングの最終日、チェックリストが終わり、生繁さんが話しはじめます

「香取、実はガイドデビューは早くて3日目、遅くて4日目って決まってたんだよ。
 だから、一緒にトレーニングを受けた新沢さんは、4日目デビューだったでしょ」
「でも、なんでお前だけ2日目にデビューさせたかわかる?」
「……わかりません」

「あのね、お前はアトラクションに配属される前からこのパークで仕事をしていたよ
 ね。それで悪い意味で、"慣れ"があったんだな」
「……なれ、ですか」

「そう、3年も同じ場所で働いていれば誰でも"慣れ"が出て来るんだけど、特にお前
 の場合はそれが激しかった。それとお前の性格上、一回目で簡単にできちゃうと、
 何だこんなもんかって、なめちゃうんだな」
「それにうまくこなせたことで、失敗する人の気持ちもわからなくなっちゃうんだ」
「はぁ……」

「だから、町丸さんと相談して、お前には最低限のことだけを教えて、2日目にデビ
 ューさせたんだよ」
「トレーニングはね、プログラムはきちんとあるけど、お前みたいなタイプにはあま
 り教えないことが、逆にトレーニングになるんだな」

「それと反対に、新沢さんみたいな人には、完璧に教えて成功させてあげることで、
 自信をつけて学んでもらうんだよ」

「今はわからないかも知れないけどな……」

今振り返って見ても、私にとって"教えないことでトレーニング"してもらったことは
、大変貴重な体験でした。そしてそれは、私がトレーナになった時にさらに深く実感
できたのです。

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2005年06月15日 00:32 |メールマガジン(バックナンバー) | トラックバック(10) コメント(0)



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