No.005「第4話:初めてもらったゲストレター」



これは、私が高校生のころはじめてゲスト(お客様)から頂いた「ゲストレター」のお話です。

当時、私の仕事はパレードを多くのゲストに安全に楽しんでいただくための「ゲストコントロール」というお仕事です。基本的にはパレードのためのゲストコントロールですが、現場に出ればゲストサービスを行うのも私たちのお仕事です。

読者のみなさんの中には良くご存知の方もいるかと思いますが、当時私の勤めていたパークでは、ゲストが写真を撮っているのを見かけたら、進んでシャッターを押して上げましょうと言うのがあります。

このことをフォトサービスと呼び、入社時の導入研修で1回、現場OJTで1回教わります。

●頭で理解をしていても“苦手は苦手”

私の入社当時は、導入研修で「私たちスタッフの仕事はこんなお仕事です」と言ってイメージビデオを見せてくれまました。(そのイメージビデオには大勢のゲストの笑顔とそこで働く従業員のビデオでした)

ビデオの中で、家族連れのゲストのお父さんがカメラを持ち、写真を撮ろうとしています。そこに通りかかったスタッフがその家族に声をかけ、家族全員の写真を撮ってあげるのです。

ビデオを見終わったあと、インストラクターから説明を受けます。

「みなさんが仲の良い友人や家族と、パークに来たとしましょう。そこで楽しかった思い出を写真に収めた
 いと思ったことはありませんか?」

「やっぱり楽しい思い出を写真に撮るわけですから、全員が写った写真のほうが良いですよね」

「そんな時に私たちスタッフが声をかけ、一緒に来た人全員の入った写真を撮ってあげましょう」

なるほどです。私もこの説明を受け、また現場のOJTを受けた時にはそう思いました。しかし、いざ現場で実行に移そうと思ってもなかなかできません。だって、普段見知らぬ人に声をかけたことなどめったにありませんし、昨日まではただのヤンキー……。

自分自身の容姿も考えれば仕方がありません。そんな私とは反対に周りの先輩スタッフや、同期のスタッフをみると、楽しそうにゲストに声をかけ、写真を撮ってあげています。私も勇気を出して声をかけようと思うのですが、“断られたらどうしよう”と言う思いが強くまったく声をかけられないままでした。

さらに周りのスタッフを見て心の中で大きなプレッシャーが襲います。

たった一言勇気を出して「写真お取りしましょうか?」と言えばいいのですが、寸前のところでその“一握りの勇気”がでません。電車やバスなどで、お年寄りに席を譲れないように……。 そしてだんだんと、フォトサービスは私の苦手なひとつになりかけたころでした。


●強引なOJT開始!!
 
そんな私を見かねたのか、先輩スタッフの千夏ちゃんがこう言いました。

「香取君さぁ、フォトサービス苦手なの?」
「そんなことないっすよ」
「だって、いっつもやってないじゃん」
「えっ やってるよ」
「うーん、だったら一緒においでよ」

千夏ちゃんはこう言うと私をお城の前に連れて行きました。

「ここならいっぱい写真撮ってる人いるから、声掛けやすいでしょ。」
(こいつは鬼だ!!苦手なの知ってるくせに……)

千夏ちゃんにあおられ、カップルのゲストに近づいて行きました。
先輩スタッフの千夏ちゃんが見ているので、思い切って声をかけようとするのですが、寸前のところで、声をかけられません。

そんなことを何度か繰り返しているうちに、だんだんと腹が立ちついに逆切れ!! 思わず千夏ちゃんに食ってかかります。

「だいたいなんで、写真なんか撮ってやんなきゃなんねーだよ。撮って欲しけりゃ自分から言ってくればい
 いじゃんか!!」

「じゃぁ香取君がゲストだったら、自分から取ってくださいって言える?」

「……」

言えるわけがありません。過去に自分の持っている写真がその証拠です。
だって「全員で写っている写真」なんてないんですから……。

「香取君と同じでスタッフに声を掛けるが恥ずかしい人もいるかもしれないでしょ。だから大丈夫だよ」
「でもさぁ」

「もうわかった、もういいよ。そんなにフォトサービスしたくないならやんなくてもいいよ。イヤイヤやられる方のがイヤだもんね。でも絶対嬉しいのにな……」


●“一握りの勇気”

そう言って私を尻目に、千夏ちゃんはどんどんフォトサービスを行っていきます。当時の私は、声をかけて断られたらどうしようとそんな気持ちが、心のブレーキになっていたんだと思います。「格好悪いな」とか「おせっかい」とか思われるんじゃないかと思って……。

しかし、次の瞬間、千夏ちゃんを見ていてわかりました。
なんと“千夏ちゃんも断られていた”のです。
しかし千夏ちゃんは、断られてもそんなことは一向に気にしていません。怒るどころか、笑顔でこう対応しています。

「わかりました。また、写真撮りたくなったらスタッフに声かけてくださいね(^o^)」

そしてまた、次のターゲットへ。

〜ゴロゴロ、ビッカーン!!(衝撃の走る音)〜

そうです。私は断わられるのが怖かったんです。そのことに気づきました。
心の中で、「断られる=俺が撮ってやるっていってるのに」とサービスではない感情があったのです。

ここで私は、普段から“一握りの勇気”を持っている千夏ちゃんを思い出しました。彼女は他のスタッフが苦手なお願いでも、率先して案内できるし、どのようなタイプのゲストにも、他のスタッフよりも一歩深いところまで入っていけるのです。

また、彼女に対応してもらったゲストはみんな、嬉しそうでしたし、その時の彼女もまた嬉しそうでした。きっとそれは、当時の私にはない、“一握りの勇気”を持っていたからだと思います。

だからこそ断られるのなんて「へっちゃら」でどんどんゲストに歩み寄っていけたのだと思いました。
そしてこの頃、私自身が忘れられない体験をすることになりました。


●忘れられない出来事「東京と北海道で!!」

その日、パレードの準備の前の時間に、いつものようにお城の横の橋でフォトサービスをしようと歩いていたところ、カメラを構えた中年の女性を見つけました。その女性は、お城をバックに私と同世代ぐらいの女の子の写真を撮ろうとしている最中でした。

普段と変わらず、何気なく「よろしければお撮りしましょうか?」と声を掛けると、すごく嬉しそうにその2人が「ありがとうございます」といって、私にカメラを渡してくれます。そして私はその2人をお城をバックに写してあげると、中年の女性が非常に嬉しそうに近づいてきます。

「これでいい思い出が作れました」と深々と頭を下げ私に感謝までしてくれます。

普段フォトサービスをしていてもこんなに感謝されたことはなかったので驚いた私は、そのゲストに自然 と話かけました。

「本日はどちらからお越しですか?」
「北海道からです」
 
続けてそのゲストが話します。

「親子2人で来ました。
 今年の4月から娘が東京に就職が決まりまして、今日一人暮らしを始めるための部屋を探しに不動産
 屋へ来たんです」

「それで、もうすぐしたら娘とは離れ離れでしばらくは会えなくなってしまうので、その前に一緒にこのパー クへ遊びに行こう、ということで今日は来ました。」

予想もしなかった答えになんと返して良いのかわからずにいる私に2人は深く頭を下げてくれます。とっさに私も何か言わなくてはと思いこう言いました。

「もうすぐパレードが始まるんですよ。すごく綺麗で楽しいですから……。ここでもみれますから見て行って
 くださいよ」

「あぁパレードですか。何時からなんですか?」
「えっと、7時30分からですから、ここだと7時45分に到着しますよ」

「あら〜。残念ですがその時間はもう飛行機がありますから……」
「そ・そうですか……。でも、また2人で来てください。そのときにはパレード見てってくださいね」

後日私の所に、そのゲストからお手紙が届きました。ビックリです。

手紙には、このあいだのお礼が書いてあり、最後に「一緒に撮っていただいた写真を東京と北海道で1枚ずつ大切にしています。本当にありがとうございました。娘とも、また行こうと約束しました。今度はパレードを見に行きます」と書いてありました。

私が何気なく声を掛け、撮った写真が東京と北海道で大切にしてくれている。しかも、お礼のお手紙までもらうなんて……。
 
私はこのゲストから「商品を売ったり」「アトラクションに乗せたりすること」だけがサービスではなく、こうしてゲストのお手伝いをすることも大切なサービスなんだということを深く学びました。

あの時、一緒にフォトサービスと“一握りの勇気”を教えてくれた千夏ちゃんがいなかったら……。

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2005年06月15日 00:17 |メールマガジン(バックナンバー) | トラックバック(6) コメント(0)



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