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「カストーディアルを創ったチャックさん」

今でこそ、お掃除は尊い仕事とされてきました。僕がお世話になったTDLでもオープン当初はお掃除をメインに行うカストーディアルと言うお仕事は、どんなに時給を良くしても、誰もやりたがらない仕事だったそうです。
どうやら、現在では人気職種の上位らしいですよ。きっとそれはオープン当初から、変わらず常にゲストの一番近くで、最幸の笑顔と親しみあふれるサービスを続けて来たことが、ゲストとして体験した人達に『あんな風に私もTDLで働きたい』って言う憧れに繋がったんじゃないかなぁと思います。
そんなカストーディアルと言う部署を創ったのは、ご存知ウォルトですが、実はチャックさんと言う、元々アニメーターだったクオーターの方が実質は創られた部署だったんです。
僕も話を聞くまでウォルトが最初から創ったんだと思っていたんです。それを教えてくれたのが、当時の上司でTDLオープン時は一期生でカストーディアルの部署にいた山津さんでした。
バックステージにあるトレーニングセンターと言う、僕らが裏で練習したり、教育を受ける場所があるんですが、ちょうど山津さんと年末のカウントダウンの計画をしてた時、ふと部屋の壁のウォルトの写真の横に同じように飾ってあるカストーディアルのコスチュームを着たおじいさんの写真が気になり聞いてみたんです。
「山津さん、あのウォルトの横のおじいさんって誰なんですかね?」
「えっ‼ 香取お前知らねえのか‼」
「ハイ、全然(笑)」
「そっかぁ〜、やっぱりカストーディアル以外の部署に居たら知らねえよな。よし、教えてやるよ。俺が今でも一番尊敬しているチャックさんの話‼」
「はぁ……。」
「実はな、ウォルトが最初にディズニーランドをロサンゼルスに創った時、全くお金が無くて、オープン初年度はお掃除のお仕事と警備のお仕事は、外注だったんだって。」
「えっ‼ 最初からあったんじゃないんすね‼」
「うん、完璧主義のウォルトは、ホントは自前でやりたかったんだよ。でも残念ながらお金が無くて出来なかった……。そしてオープンから一年経った頃、当初アニメーターだったチャックさんが呼び出されて、一緒にパークを周った後、ウォルトから『チャックどうだった?』って感想を求められたんだよ。
当然、ウォルトと仲の良かったチャックさんは、ウォルトが何が言いたいのかすぐにわかって『バークの中はゴミが落ちてて汚いし、ゴミ箱からゴミが溢れてたり、トイレが汚かったり……ウォルト、君の理想には程遠いだろ』って答えた。するとウォルトは嬉しそうに『そうなんだよ。やっぱりチャックにはわかるだな。さすがチャック。実は来年からはお掃除も警備もどんだけお金がかかっても自前でやろうと思ってるんだよ』って。
それをチャックさんは聞きながら、嫌な予感がしたんだって(笑)
そしてその予感は的中して、『そこでね、実はチャックにそのお掃除の部署を創ってもらいたくてね‼』って。もちろんチャックさん当時はアニメーター。その中でも主役は一切描かせてもらった事のない、背景画専門のアニメーターだったんだって、だからチャックさんは『ウォルト、悪い冗談はやめろよ』って言ったら、『冗談なんかじゃないよ。僕はチャックだからこそ頼んでるし、この部署をできるのはこの会社の中でもチャック以外は居ないって思ってるんだよ』って……。
チャックさんは、それを聞いて益々腹が立ったんだって‼」
「えっ、なんで腹が立つんですかね?
ウォルトから言われたら嬉しいんじゃないですかね?」
「そこなんだよ。
実は当時のアメリカではさ、お掃除はブルーワーカーの仕事で、低賃金で移民や黒人、そして老人がやるような仕事と位置付けられてたわけだよ。それをヤレってことは、ある意味左遷って受け取ったんだよね。
また、それまでのチャックさんの仕事はアニメーターとはいえ、主人公を全く描いた事のない背景画専門のアニメーターだったわけだから、ひねくれてしまうのも無理ないよね。
だからチャックさんは怒って『ウォルト、僕に絵の才能が無いのなら、正直に言ってくれ。そんな遠回しなことを言われて僕は本当に傷ついたぞ‼』ってね。
そしたらそれを聞いたウォルトは、腹を抱えて笑ったんだって。
そして『チャック、何を勘違いしてるんだよ。僕は君に絵の才能が無いなんてこれっぽっちも思ってないよ。むしろその逆で、チャックは背景画のプロフェッショナルじゃないか、だからこそこの仕事はチャックしか出来ないって思って頼んでるんだよ。
このパークは全体が大きな舞台、その中で主役のゲストが居て、その横にキャストが居る。映画のワンシーンで考えたら、その背景に何がどうあったらいいのか、その事を理解して形にできるのは、背景画のプロフェッショナルであるチャック、君以外には居ないって思ってるんだよ。
それにねチャック、僕も君も移民のクオーターじゃないか、今はお掃除はブルーワーカーの仕事で僕らのような白人以外のやる仕事ってなっているだろ。僕はその文化を変えたいんだよ。ここをきっかけに、お掃除は素晴らしい仕事のひとつで、価値のある仕事なんだと、世界中の考え方を変えたいんだよ。それもあって、君に頼んでるんだよ。』
確かにウォルトの言っている事に嘘はなさそうだって思ったんだって、でもねウォルトは口がうまいからそうして僕を乗せようとしてるんじゃないかって言う気持ちもあって、取りあえず答えを出すのに時間をくれって頼んで、そこから1週間考えたんだって。
もし、本当にウォルトが言ってるように、お掃除に対する考え方をこの仕事を通して変えられるなら魅力的だけど、好きな絵を描く事を止めてまで、やるべきなのか……。
色々悩んだ挙げ句、チャックさんはウォルトの真意を確かめようと思ったんだって‼」
「…真意…ですか」
「そう、もし自分がお掃除の部署をやるなら条件があると。やるなら本気でやってお掃除に対する考え方や文化を変えるのだから、組織の中で、お掃除の部署をウォルト(社長)の下につけるんじゃなく、ウォルトの横にして欲しいと。そうすれば、ウォルトからも意見は聞くけど命令は聞かなくてすむから。もしこの条件でもよしなら、本気でやろうと、でも逆なら潔くこの会社から身を引こうと。
そして、その条件をウォルトに告げるやいなや、『なるほど、チャック、それはイイね。そうしなければ、僕のイメージしているようなものにはならないからね。すぐやろう』と言って、組織図を書き換えたらしいんだよ。
それを見て、チャックさんは本気でやるって決めて、そこからはウォルトの意見も聞きながらだけど、理想のカストーディアルを作るべく邁進されて、現在のカストーディアルになったんだよ。」
もちろん、日本には昔からお掃除は尊い仕事で、基本中の基本と言う文化もあったと思うので、そう言った基本文化の上に、カストーディアルが入ってきてより一層受け入れられたのかも知れませんが、このチャックさんの功績も高いんじゃないかなって思います。
やっぱりディズニーイコール、カストーディアルってイメージがありますもんね(^^)